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児玉語録

『世界選手権雑感 そして人間成長の要素』

2009/05/06

4月28日~5月5日、世界卓球選手権大会が開催され、

その感想を書きたかったので、今月の「語録」は5月6日とした。

世界卓球選手権大会も終わった。
多くの話題を提供して、連日超満員だったことは、

一卓球人として嬉しかった。しかし、結果は中国選手の独壇場となり、

日中の差が縮まらなかったことが残念に思う。
技術的には、台上処理以外は殆ど差が無いので、
何と言っても「心」と「体」の鍛え方が重要であると改めて確認できた。

医科学的に研究して、選手個人に対して必要な筋力強化のプログラムを、
早急に作る必要性を痛感した。

心理面での事例を取り上げるとすれば、
女子石川佳純 対帖雅娜の試合、ゲームカウント0-3 からの

4ゲーム目3-9から石川選手が諦めずに集中した粘り強さ。

一方、帖選手の楽勝ムードでの心のスキ。
卓球の心理面の恐ろしさを思い知らされた。
水谷・岸川
のダブルス ガオ・ニンとヤン・ツーとの準々決勝、

審判判定後8-10からの執念による、逆転勝利、
翌日、準決勝2ゲーム目の7-3 リードから、強気な思い切りがなくなり、

逆転され、試合全体の流れが変わってしまった。
これらは、全て技術には関係ないところでの勝負である。

私はいつも
「リードしたら、リスクを冒しても、それまで以上に思い切れ。

相手も必ず開き直ってくる」
「負けている時は、開き直って思い切れ。

どんなことがあっても諦めるな」
口グセのようにアドバイスしているが、これはビックな大会になればなる程、

重要なことである。この3つの事例、君たちも肝に銘じて、

今後の卓球人生に活かしてもらいたいと思う。

私は日本代表選手団の監督として、このような事例は数え切れない程、
体験したり、目撃したりしてきた。
もちろん、高度でハードな訓練を乗り越え、自信と誇りを持って、

高い目標に向かって意欲が充満している状態であるからこそ、

基本となる大事なアドバイスなのである。
今の日本は男女共、若い有望な選手がどんどん育っている。
近い将来、間違いなく打倒中国を果たし、世界に君臨できると思う。

先ずは、指導陣がこのことを確信し、ポテンシャルのある選手を、

いかに育てるか命懸けで研究し、アンテナを張り、選手と共に一丸と

ならなければならない。
こんな希望に満ちた、明るい時代は何十年ぶりだろう。


人が成長していくには
・ 熱中できるものを持つ
・ 持続する精神力を持つ
・ 絶対に諦めない
・ 新しい考え方を持つ
・ 自由な考え方を持つ
・ 自由闊達な発想を持つ

この6つが大事な要素である。

即ち、熱中し、持続し、さらに新しい考え方で活路を切り拓いていく姿勢が、
人間としての成長を促すのである。

強い選手は、過去の試合で何度も失敗を経験し、
今回の王皓のように、自分自身の弱点を克服し、
「絶対に世界チャンピオンになる」という「強い思い」で今大会に臨んできたと思う。

強さの本質は、負け試合における自分自身の問題を解決していく道程で
培われていくのである。
試合の経験とは、失敗の回数ではなく、リカバリーの回数である・・・

と知っておいて欲しい。

常に、物事を客観的に見る習慣をつけ、自分を外から見るようにする。
問題解決に積極的に取り組む姿勢、そして行動に移す、
そのことが価値ある自分を作り上げ、

世界で通用する自分を育てるのである。

自分を育てるコーチは、自分以外には存在しない。
指導者は、あくまでもアドバイザーである。

人間の能力なんて、大差はない。
どれだけ徹することが出来るかで、差が出るのである。

自分は何故卓球の道を選び、志してきたのか、原点に戻り
新たな一歩を踏み出していこう。

児玉圭司名誉総監督

昭和35年~45年
明治大学体育会卓球部監督
昭和45年~令和2年
明治大学体育会卓球部総監督
令和3年~現在
明治大学体育会卓球部名誉総監督

(株)スヴェンソン 代表取締役会長

日本学生卓球連盟 名誉会長

明治大学駿台体育会 名誉会長

昭和31年
世界選手権シングルスベスト16
昭和40年
第28回世界卓球選手権 日本代表監督
昭和48年
第32回世界卓球選手権 日本代表監督
昭和50年
第33回世界卓球選手権 日本代表総監督兼監督